「虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか」を読んだ

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読書

こんにちは、ワーママpicaco(@wmpicaco_)です。

子供の育ちに関する衝撃的な本「虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか」を読んだのでそのことをまとめます。

「犯罪や非行に走る子どもたちは、育ちや家庭環境に問題があるケースも多い」ということ自体は、なんとなく耳にしたり感じていることではあるけれど、実際にはそういった環境に置かれた子どもたちがどんな生活しているかを知る機会はなかなかありません。この本ではその実態が詳細に語られており、一般的な家庭に育った私からは想像を絶するような衝撃的な本でした。

 


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1 本の概要

著者の石井光太さんはノンフィクション作家で、著書の一覧を見ると貧困や震災、戦争などの社会問題に関する本を多く書かれているよう。私はこの方の本を読むのは初めてだった。

なぜこの問題に取り組むのか?冒頭の一文に惹きつけられた。

「事件を起こす少年たちの心の中で何が起きているのだろう。それを見るのは恐ろしい気もするが、目をそらしたままでは空虚な議論がくりかえされるだけだ。社会をどう変えていくべきかを考えるために今その扉を開けて見たいと思う

まずは、知ることから。とても大切なことだと思う。

自分の子供が深刻な非行に走らないために、または、非行の被害にあわないために、という思いもあって本を読み進めていったのだが、途中からそれどころではない別世界に引き込まれていくような感覚でした。なんだか遠い世界のことのよう..でも現実にこの日本で起きていることなんだ、と思うと非常に重たい気持ちになった。

2 非行少年/少女の実態

私自身もティーンの頃は親に反発して、家庭の中では「非行少女」だと言われるような行動をしていたこともあったけれど、この本を読むと私の非行レベルなんて比じゃないな、と感じた。

「非行に走る子供達には家庭環境に問題があり、酷い虐待を受けたりして脳の成長が遅れたり、正常に発達できていないケースも多い。また発達障害と虐待が重なり適切な対処をされないまま育ってきて問題行動が大きくなるケースも。」

そもそも脳や精神が正常に発達できていないので、常識的な感覚が通じないというのだ。なぜ犯罪行為をしてしまうか?と深堀りしていっても、必ずしも理屈で納得できるような結論が出るわけではないということ。

子どもが犯罪を犯すと、少年院に送られる、と私も中学生の頃から知ってはいたけれどどのレベルだと補導だけで済むのか?何をしたら少年院?といったルールについては、言われてみれば全くわかっていなかった。知る必要のない世界にいたからであろう…

本の内容からから簡単にまとめると、非行をした時にの処分としては保護観察や自立支援施設送致、少年院招致など様々なパターンがある。そのどれになるか、の判断基準が明確でなく、地域差があったりもする。(不良が多い地域だと相対的判断で処分がゆるくなる)

また、近年、少年院はどこも定員割れだそう。

少年院での更生指導にはアンガーマネジメントや、マインドフルネスなど、心理学的なアプローチも多く用いられている。ビジネスの場でも見聞きする手法がきちんと使われているんだなということには感心した。昔ながらのアップデートされない更生指導しか行われていないんじゃないか?という勝手なイメージだった。

 

3 性非行について

性非行は、子どもが成長するにつれて心配が大きくなる問題。男児としては、我が子が歪んだ性癖を持つ可能性もあるのでは?と思ったりもする。

そんな中、この本を読むとまず、

性非行は性欲だけが原因ではない。少年の歪んだ内面(共感性の乏しさや適応力の欠如、自己統率力の欠落など)から引き起こされる。

ということがわかった。

中には、ハイパーセクシャリティーと呼ばれる過大な性衝動を持っている少年もいる。
また、サディズム(人の手足を切断したいとか、息ができずに苦しんでいる顔を見たいといった衝動)と性欲が結びついてしまうパターンもある。事例の1つとしては1997年に兵庫県で起きた、酒鬼薔薇聖斗の事件。この事件も性非行と括られる事件だったのか…

知的障害児が性非行に及ぶ場合も治療は困難。
色々なケースはあるが90%以上の少年は治療が可能。少年院のような社会から切り離された特殊な環境下ではなく、社会で生活しながら専門家による治療を数年にわたって受けるのが更生の条件。しかしそのような専門的な医療機関は現状ほとんどなく、治療費の問題もある。国のバックアップがなければ実現は難しい。

性非行加害者の更生の難しさがわかった。

 

3 薬物依存

私にとって衝撃的だったのは、12歳小6で母親の男に覚せい剤を無理やり打たれて性的虐待をされていた女の子の話。

・「12歳でもクスリを使ってやるとセックスってむちゃくちゃ気持ちいいんですよ…」

・15歳でクスリで捕まって少年院に入った。「たまたま母親も少し前に逮捕されて刑務所に行ってたから親子でお世話になった感じです…」

・18歳で2度目の少年院、22歳で出産、1年で離婚してシングルマザーになりまたクスリ。母親が亡くなった時にまたクスリが見つかって刑務所。子どもは児童養護施設で暮らしている。今は子どもと暮らしたいと思っている

女子の非行内容で一番多いのが覚醒剤取締法。一方男子はランクに入ってさえいない。女子はクスリとセックスがセットになっている。寂しさのようなものを自分の体を使って埋めようとする。一時的な快楽に溺れてつらい現実を忘れようとする傾向がある。

薬物は、進行性の慢性疾患。一度薬物依存になったら、完治することはなく、ずっと付き合っていくしかない病気。やめさせる、ことはできなくて、やらない期間をどれだけながくつづけさせられるか、ということ。
対処法の1つがHALT (hungry 空腹、Angry 怒り lonely孤独 tired疲れ) 特に男子の場合はこうした感情に陥った時に薬物の再非行に走る傾向がある。その時の対処法を考えさせていくことが更生施設でやっていること。

経験上、生きていれば薬物依存の人と出会う可能性というのはまあまあ、あるんじゃないかと思う。我が子の交友関係を親がコントロールしていくことはできない。仮にそういった世界に交わることがあったとしても、自分は薬物依存の世界に入っていかない、という選択ができる精神を子どもに育まなくては、と思う。

4 更生施設

茨城ダルク」という、薬物依存からの回復施設についても書かれていた。

・ダルク自体は全国に60箇所以上の支部がある更生施設。
・代表は70代の元暴力団組長で薬物依存の経験者
・「クスリをやめたいならそいつにとって絶対に失いたくない宝物をつくるのが1番。そういうものをたくさん手に入れるんだ」と語る
・そして、「茨城ダルクにできるのは依存症の人間に何度裏切られても並走すること

また、「田川ふれ愛義塾」という更生施設についても素晴らしいなと思う取り組みが紹介されていた。これも元暴走族の方が作った施設で、誰もが匙を投げたような子どもたちが集まるが、その方は「ここに来れば大半の子を更生させる自信がある」と語る。

経験者が更生に関わるからこそ、非行少年少女たちもついてくるのだなと感じた。本当に、尊い取り組みだ。

5 被害者家族の慟哭

被害者家族について書かれた章は心が苦しくなって読みすすめるのが辛いほど。

・集団リンチ加害者の少年たちは1、2年で少年院から出てきて反省の色なし。

・損害賠償の支払いにも応じない家族が10家族中4家族。支払っている場合も加害少年自身が全額払った家は1つもない。親に代わりに払ってもらっていた。

・そして事件から20年経ち、30代後半になった加害少年たちの大半は家庭を持って事件などなかったかのように平然と暮らしている。たまに町で会っても気づかないふりをして通りすぎるだけ。

気持ちのやり場がない。


重たい内容の本ですが、実態を多くの人が知り、それぞれが自分なりに考えることが社会を良くする一歩だと思います。参考になれば、と思います。

同じ石井光太さんの著書で川崎中1男子生徒殺害事件について書かれた本、「43回の殺意」も気になっています。

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【2019/10/18追記】

気になっていた「43回の殺意」読みました。こちらも内容が重たくて、読み終わってもしばらく頭から離れない。


 

 

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wmpicaco

2人の子どもを育てるアラフォーのワーキングマザー。転職経験なしの会社員。自分が本当にやりたい仕事はなんなのか?を模索しながら暮らしています。 詳しいプロフィールはこちら
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