アラフォーワーママが「彼女は頭が悪いから」(姫野カオルコ さん著)を読んだ感想


こんにちは、ワーママpicaco(@wmpicaco_)です。

「彼女は頭が悪いから」(著者、姫野カオルコさん)という、東大生による強制わいせつ事件をテーマにした小説を読みました。2016年に実際に起きた事件に着想を得たというこの小説、非常に引き込まれて気持ちが重くなるような、内容でした。帯には「東大でいちばん売れた本」ともあり、東大では著者を招いてシンポジウムが開かれたり、ネットで話題を呼んでいた2019年4月の東大入学式の上野千鶴子さんの祝辞でも取り上げられるなど、世に問題提起をする意味のある本だと思います。私なりの感想をまとめます。

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1 なぜ引き込まれたか?

それなりにボリュームのある本だけれど、家事育児の合間の2日間で一気に読み終えてしまった。

なぜそんなに引き込まれたか?考えると、細かく描かれた登場人物の行動や心情が、自分の身近に起こっていてもおかしくない出来事のように感じたからだと思う。今でこそ私は主婦で、学生からは年も生活も離れているけれど、大学生時代を振り返ると本に出てくるシチュエーションが容易に想像できるような経験をしてきたからだと思う。そしてまた、これから子供たちが成長していくに従い、こういうことが起こりえる世の中を生きていくんだ、ということも重ね合わせて考えてしまうような感覚だった。

ちなみにこの本、装丁が変わっていて、上側と下側を比べてみると上側がわざと綺麗に切り落とさずギザギザになっているデザインのよう。何か意味があるのかな?

2 被害者「神立美咲」

普通の家庭に育った、ごく普通の女の子。3人兄弟の一番上のお姉ちゃんで、妹弟の世話をしたり、家事を手伝ったりしながら生活してきた。「どうせ私は」と自分を卑下したり、「あの子は違う」と友達を羨んだりしながらも、小さなことに幸せを感じることができ、前向きに生きているところが素敵な女の子だな、と私は捉えた。

美咲は偏差値48の女子大に進み、ひょんなことから加害者の一人である東大生「竹内つばさ」と出会って恋をしてしまう。美咲の育ちとか性格は自分とはあまり重なりあわないのだけれど、この恋をしてしまうところの女心が、すごい共感できた。だからこそ、あとに続く展開が辛い……

3 東大生「竹内つばさ」

事件の加害者は東大生5人なのだけど、キーマンは「竹内つばさ」という男の子。つばさは広尾の裕福な家庭で育ち、兄も東大に進学。自分は中高一貫の私立校に通う兄とは違うと反発しながらも、名門の公立校から東大に合格した。東大では表向きは飲み会を開くインカレサークル、裏では女の子の写真を売りさばくネットビジネスをしながら、「東大」というブランドに酔うように、だんだん調子に乗った人間になっていく感じで描かれている。

でも、ありえない、こんな嫌な奴。という感じでもない。なんとなく、わかる。こういうふうになっちゃう気持ちも、という微妙な線なのだ。人間関係、登場人物の行動、成り行き、いろいろな、小さな偶然がめぐり合わさり、とてつもなく酷い出来事が起きた。

そんな感じが、読んでいて恐ろしさを煽る。

4 加害者の母親たち

そして、私にとっては、事件発覚後の加害者の母親たちの行動、心情がまた印象的だった。同じ女なのに、全く、被害者の心には寄り添っていない。息子を守ろうとして必至という感じよりはむしろ、捉え方が軽すぎる。「バカな女に引っかかって」とか「大したことないことで」というような発言。

これがまた、読んでいて非常にモヤモヤ感が増すポイントだった。かといってこれもまた、「こんな母親あり得ない」と完全に切り捨てられるわけでもなく。息子も娘も持つ母親としては、加害者の親の気持ちも被害者の親の気持ちも想像はしてみたものの、これだという答えが出る問題でもなく。


フィクションとはいえ、実話に基づいた話。それに、大学生によるわいせつ事件はこの2016年の東大生の事件以降も何回か報道されている。答えなんか出なくても、読者の心にモヤモヤした重い気持ちを残し、問題提起をするような、素晴らしい作品だと感じた。

それにしても読書って、実体験できない世界を追体験できてなんて面白いんだろうとこの本を読みながらつくづく、思いました。「面白い」という表現を使うのがはばかられるようななようだったけれども。

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保育園に通う2児を育てるワーキングマザー。新卒から10年同じ会社に勤め、仕事はお金のためだとしか思ってこなかった。産後、我が子と離れて過ごす時間をそんなふうに使うのはもったいないと思うように。仕事について、やりたい事について、模索中。詳しいプロフィールはこちら