村井理子さんのエッセイ「兄の終い」を読んだ

ワーママpicaco(@wmpicaco_)です。

村井理子さんの「兄の終い」というエッセイを読みました。

54歳で孤独死したお兄さん、これまでさんざん迷惑をかけられて疎遠になっていたお兄さんの急な病死の連絡を受けて、遠方までその家や家族のあれこれを片付けに行った5日間のことを描いたエッセイです。

内容に引き込まれ、少し心が温かくなりながら最後まで一気に読みました。言われなければ小説かと信じ込むような、面白さ。人の死を扱う、実話に対して面白い、と言うのもどうかと思うけれども、それを許されるような爽快な読後感でした。

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1.村井理子さんとは?

村井理子さんは、1970年生まれの翻訳家、エッセイストで双子の息子さんを持つお母さんだそうです。

私は彼女の本を読むのは初めてでしたが、プロフィールの中に見つけた「ぎゅうぎゅう焼き」という言葉に何やら見覚えが… 2015年ごろにSNSで話題になっていたオーブン料理「ぎゅうぎゅう焼き」(パットの上にお肉や野菜を敷き詰めてオーブンで焼いた料理)はお友達の家に行った時に教えてもらって、私も作ったことがありました。この「ぎゅうぎゅう焼き」はこの本の著者である村井理子さんが、「村井さんちのぎゅうぎゅう焼き」としてTwitterに写真を投稿して話題になった料理なんだそうです。

本を買ってからこのことを知りましたが、ひょんなところで人は繋がりや親近感を感じるものだなあ、と思います。

兄の終い」はその村井さんの経験した実話を描いたエッセイ。

2. あらすじ

本の帯「一刻もはやく、兄を持ち運べるサイズにしてしまおう。憎かった兄が死んだ。」という文が強烈で、これを見て私も、よくわからないけどすぐ読んでみたい!と思い本を手に取ることになった。

村井さんのご両親はすでに亡くなられていて、残された家族であるお兄さんとの関係は良くなく、お金の無心をされることもあったりして、遠方に住んでいてほとんど縁を切った、切りたい、と思っているような状態だった。

お兄さんは離婚して小学生の息子さん(良一くん)を引き取って二人で暮らしていたが、病気を持っていて仕事も満足にできず生活は困窮し、生活保護を受けるほどだった。

そんな中、お兄さんは突然自宅で病死してしまい、第一発見者である息子さんは児童養護施設に引き取られた。村井さんは唯一の親族として警察から連絡を受け、ご遺体の引き取り、火葬やゴミ屋敷と化した家の片づけをしなければならないことになる。

そこには、お兄さんの元妻である加奈子ちゃんとその娘(良一くんの姉)の満里奈ちゃんも同行することになる。

始めの書き出しからいって、お兄さんがどうしようもない人間っぽいので、その元妻とか子どもたちもなんとなく、どうしようもない人たちなのかな?と失礼ながら想像してしまうのだが、全くそんなことはなく、真っ当な温かい人たちの姿が描かれていくところがすごく良い

村井さんを含めて、お兄さんを取り巻く人々の人間模様を感じつつ、本を読み終わって感じたことは、結局のところ突然死してしまったお兄さんも結構幸せだったんじゃないかということ。はたから見てどうしようもなさそうに見えて、息子さんを一生懸命育てる一面もあったり、まじめに働き口を探そうとしている一面もあったり、全く憎みきれない。

3. 貧困について

特に、村井さんとお兄さんの元妻加奈子さんが、お兄さんと息子さんが暮らしていたアパートに、片付けのために踏み込むシーンは息を飲む感じ。生活していて、亡くなってしまったそのままの状態が残されていて、よくテレビでみる孤独死した老人の家の片付けシーンそのものといった感じ。

食べかけのカップラーメンや飲み物がそのままになっていたり、布団もしきっぱなし、そこに小学生の息子さんも一緒に暮らしていたとなるとさらに暗雲たる気持ちに… 息子さんの部屋には洋服が掛けられいたけれど、ほとんどサイズが小さい、という点も印象に残る。

この場面を読んで真っ先に思い浮かんだのが、最近読んだ、虐待や育児困難を扱った本「育てられない母親たち」のことだ。この本は子供の虐待を扱ったルポタージュだが、かなりの割合で虐待には貧困が絡んでいる。村井さんの甥っ子の良一くんと同じように、児童養護施設に引き取られる子供も少なくない。

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一見、良一くんが貧困かつ虐待される子供たちと同じ境遇に置かれているのでは、と連想してしまったのだが、読み進めていくと「生活保護を受け、家が汚部屋になってしまうような貧困家庭」というところは同じだったとしても、良一くんの育ちは全く違うということがわかった。周りの人たちにすごく愛されて育っていることが伝わってきたのだ。

学校の友達や先生たち、児童相談所の人々、実母である加奈子さんやお姉さんの満里奈ちゃん、それに叔母さんの村井さん、なにより父親である村井さんのお兄さんもきちんと愛情を持って良一くんを育てていたことが伝わってきた。

「クリスマスはどんなふうに過ごしていたの?」と村井さんが尋ねるシーンでの良一くんの返事。「お父さんがケンタッキーとケーキを買ってきてくれた」。ここですごく、それを感じた。

最終的に複雑な手続きを経て養護施設からお母さんのもとへ引き取られることになり、みんなで談笑しているシーンで、良一くんが明るく楽しそうに、幸せそうにしているシーンが印象深くてすごく温かい気持ちになった。


家族について、幸せについて、考えさせられて、また最後には気持ちが温かくなるようなとっても良い本でした。ぜひ読んでみてください。

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こちらの本も、虐待、貧困という社会問題を考える上で勉強になります。

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保育園に通う2児を育てるワーキングマザー。新卒から10年同じ会社に勤め、仕事はお金のためだとしか思ってこなかった。産後、我が子と離れて過ごす時間をそんなふうに使うのはもったいないと思うように。仕事について、やりたい事について、模索中。詳しいプロフィールはこちら